カード審査の3年後はきっとこうなる【審査担当者が人間からAIへ】

カード審査の3年後はきっとこうなる【審査担当者が人間からAIへ】
この記事の監修者
三浦佑一郎
シニアクレディッター(クレジット審査業務能力試験上級コース)

関西の国立大学を卒業後、メーカー系の金融機関で債権管理ととも与信審査を4年間担当。

今回は 「AIに審査される時代がやって来た!」をご紹介します。

 

AIに審査される時代がやって来た!

審査の未来像については、現役の法人カード審査担当者としてご活躍されている三浦さんにご説明頂きましょう。どんな話が聞けるのか、是非お楽しみ下さい。

近い将来、AIに審査される時代がやってくると聞きましたぞ。AIと聞いてもピンと来ないのであるが、一体どのようなロボットなのであろうか。ドラ○もんみたく可愛いければ、孫の家光も喜ぶのじゃが。
家康殿、AIとはロボットではなく人工知能でござるよ。これまで人間にしかできなかった複雑な作業をコンピュータにさせようという企みじゃ。そのうち人間がAIに取って替わられる日も遠くないぞよ・・。

 

審査担当者の仕事が消えてなくなる?

こんにちは、某クレジットカード会社で審査担当者として勤務しております三浦と申します。今回は「AIに審査にされる時代がやって来た!」というお題でお話させていただきます。審査担当者にとっては大変悩ましい話題ですが。。

さて、最近はビジネスの様々な現場でAI(人工知能)が目覚ましい活躍を見せており、国の行政機関(厚生労働省、国土交通省)をはじめ、製造業や印刷業でもAIの導入が進められています。

もちろん金融業界も例外ではなく、消費者金融業界では「AIがいくら貸し出すか」を決めるシステムが開発されています。(参照:『AIを活用した「信用力調査」驚異の精度』)カード会社各社では、自社で蓄積された延滞者情報をAIに学習させることで、AI与信を進める動きは既に始まっています。

実際、2019年6月からはYahoo!スコアなるものが登場しました。こちらはYahoo! JAPAN IDごとに算出されたスコアリングを元に、個人の行動様態を計測するものであります。

「同意なき個人情報の流出だ!」とYahoo!ユーザーの猛反発により拡大には至っていませんが、そのうち“Googleスコア”や“ソフトバンクスコア”なるものが登場しても、何ら驚くに値しません。

クレジットカードの審査でAIに期待されているのは、審査精度の更なる向上(「カードを発行した人が、きちんと使って返済してくれるか」を事前に把握すること)です。審査精度の向上はカード会社にとって永遠の課題でありまして、ここではクレジットカードの審査の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

【クレジットカードの審査の歴史】

審査手法 人間審査 機械審査 AI審査
誰が審査する? 審査担当者 審査システム AI(人工知能)
何を重視する? 申込み者の人格 申込み者の信用情報 申込み者の行動様態
いつ頃始まった? 1950年頃 1995年頃

2020年頃

 

クレジットカードの審査の歴史は「人間による審査から、AIによる審査へ」「主観的判断から、客観的判断へ」と進んでいることがわかります。私の職場でも、機械が判定しかねる案件は審査担当者が結果を決めていますが、そのうち審査担当者が不要になる時代がやってくるでしょう。。

 

AI審査が導入されたのは、金融業界の都合です

では、「AI審査とはいったい何だ?」と聞かれれば、「ビッグデータ(インターネット上の大量かつ複雑な情報群)やソーシャルメディア(FacebookやTwitter)の情報を元にAIが審査結果を下す仕組み」になります。

AI審査の内容は後ほど詳しくお話するとしまして、ここには金融業界のウラ事情が深く関係しています。近年、AI審査は海外の消費者金融業界から導入がスタートしました。「なぜ海外で?」「なぜ消費者金融業界で?」と思われた方は良いセンスの持ち主です。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、実はアメリカ人の約半数が金融機関から融資を受けることができない「クレジット難民」と呼ばれています。融資を受けられないのは、申込者のクレジットスコアが審査基準に足りないことが原因です。そこで、従来型の審査システムでは融資を断られてしまう人々を救うべく登場したのがAI審査という流れです。

「これまで融資を断って来た人々を顧客にするために、審査の仕組みそのものを替えた」と読み解けば、金融業界がいかにアコギな商売であることがお分かり頂けるでしょうか。

 

海外でAI審査が導入された事例はこちら

企業名 設立 対象国 概要
ゼスト・ファイナンス
(Zest Finance)
2010年 米国 ビッグデータを活用し、ペイデイローン利用者層により低い金利で小口の消費者ローンを提供。
クレディテック 2012年 東欧・中南米等諸国
(本社はドイツ)
SNS等ウェブの情報を活用した審査で、クレジットビューローが未発達な新興国で小口の消費者ローンを提供。
ネオ 2011年 米国 米オートローン専門会社。審査にSNSを活用し、クレジットヒストリーが乏しい自動車購入者(主に若者)にオートローンを提供。
レンドアップ 2012年 米国 ペイデイローン利用者層に対して、クレジットヒストリーとソーシャルデータを組み合わせた審査で低利の消費者ローンを提供。
ムーブン 2011年 米国 消費者向けモバイル金融サービスを展開。SNSをベースにした決済サービスが主体で、SNSを審査に活用して消費者ローンも提供している。
レンドー 2011年

フィリピン・メキシコ・コロンビア
(本社は香港)

SNSを活用した審査で、新興国のクレジットヒストリーの無い顧客に小口の消費者ローンを提供。

【参照】ソーシャルメディアを活用した新たなリテール金融与信管理の可能性

AI審査の対象となるのは、クレジットスコアが低いアメリカ人や、クレジットカードやローンを組んだことがない新興国の消費者です。どちらも信用情報(金払いの履歴)を重視する従来型の審査システムでは融資が不可能な人々ですが、信用情報以外の情報を取得することで、どうにか融資できる顧客層を拡大しようとしています。

次に、「信用情報以外の情報とは何を指すのか」「AIがどのように情報を評価するのか」をご紹介します。

 

AI審査はあなたの行動を丸裸にします

少々物騒なタイトルを付けましたが、決して大げさではありません。

あなたが朝起きてから夜寝るまでの行動や言動、家族や会社での人間関係すべてがAIの審査対象になるのです。もはや隠し事など絶対に不可能な世界がやってまいりました。。

【AI審査の対象リスト】

審査の対象 高リスクと判断される事例
インターネットの閲覧履歴 アダルトサイトへのアクセス頻度が高い
携帯ゲームの利用時間 携帯ゲームの利用時間が長い
Facebookの交友関係 ローンの支払いが遅れている友人がいて、その友人と頻繁に連絡を取っている
夜間外出や外食の頻度 夜間外出や外食に出かける頻度が多い(携帯GPSから測定)
Twitterやブログ ネガティブな言葉やスラングが多く使われている

 

この図からは、金融業界が理想とする人間像が見て取れます。

つまり、「善良な人間関係に恵まれ、ネットやスマホに興じることなく、自宅で家族と過ごす」方です。こういった方であれば、返済期日にきちんとお金を返してくれるというのが金融業界の言い分です。

反対に「金払いの良くない友人が多く、ネットやスマホに触れていないと不安で、頻繁に夜遅く外食に出かける」方は信用できないということです。

このように、AI審査ではあなたが普段気にしていない行動や言動のすべてがAIの審査対象になります。私個人としては、こうでもしないと顧客層が拡大できない消費者金融業界に問題があるように思えてなりません。

その一方で、資金繰りに困っても銀行から融資が下りず、仕方なく消費者金融に頼らざるを得ない経営者の苦悩も見てきました。かく言う私も、そんな金融業界に身を置く一員でありまして・・。

今後、ありとあらゆる業務がAIに取って代わられる金融業界の中で、審査担当者としていかに価値のある存在でいられるかを突き付けられているような気がします。

 

 

この記事の監修者
三浦佑一郎
シニアクレディッター(クレジット審査業務能力試験上級コース)

関西の国立大学を卒業後、メーカー系の金融機関で債権管理ととも与信審査を4年間担当。

 

 

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