- 三浦佑一郎
- シニアクレディッター(クレジット審査業務能力試験上級コース)
関西の国立大学を卒業後、メーカー系の金融機関で債権管理ととも与信審査を4年間担当。
今回は「法人カード審査担当者の仕事内容」をご紹介します。
法人カード審査担当者の仕事とは?
以前の記事、【カード会社の審査担当者の仕事内容】では、信販系カード会社の審査担当者が質問に答えていましたが、私は流通系カード会社に勤務していますので、やや回答の内容が異なっています。
そのあたりのカード会社ごとの違いも含めて、楽しんで頂ければ幸いです。
※模擬審査の判定結果は、あくまでも当サイト独自の基準によって算出される評価値です。よって、実際の審査とは結果が異なる場合がありますのでご注意ください。法人カードお申し込み時には、公式サイトに記載されている注意事項をご確認の上、お申し込みください。
法人カード審査部の仕事3選
法人カード審査部の仕事は、以下の3つに分類されます。
カード入会審査
カードを申込まれた法人や個人事業主、フリーランスの審査です。審査部にも繁忙期があり、4月、10月、12月あたりは年度や期の節目になる法人が多いため審査件数も多くなります。
申し込みからカード発行までの時間を短くしたい方は、この時期を避けて(1~3月、5~9月、10~12月に)申し込むと良いですね!
さて、一般的に法人カードはシステム上で自動的に審査がされています。「スコアリング」というもので、業歴や従業員数、資本金額、売上等の推移を点数化し、基準を超えれば承認とされるものです。
しかし、スコアリングのような定量的な評価では適正な判断ができない会社は、審査担当者の手元で企業分析のもと審査をされます。
- 業歴の浅い個人事業主
- 赤字決算の法人
- 希望の利用枠の大きな申込み
こういった手元での審査では、後述する企業研究での情報や決算書をじっくり分析しています。私は、この手元での法人カードの審査を2年ほど担当しましたが、累計で1,500期分ほどの決算書を分析してきました。
カード発行後の途上管理
入会審査が「カードを持つための初期段階の審査」であるのに対し、途上管理は「カードを持ち続けるための継続的な審査」を指します。
利用金額や業歴、業種によって定期的に法人を分析し、利用枠を増減したり、時には解約を促したりします。
申込みがあった企業研究
審査部ではあらゆる方面から企業の調査をしており、貸倒リスクを小さくしています。
クレジットカードとはいえ請求額が支払われないまま倒産されると、取りっぱぐれになってしまうことも。信用を管理するという点ではクレジットカードもローンも融資も同じようなものです。
そこで、お客様から提出される決算書のみならず、日夜企業研究用の様々な(ありとあらゆる!)情報源から情報を得て、審査をしています。
審査で気にしていること
会社ホームページの有無
現代のネット社会において、会社ホームページがない法人は審査担当者として警戒してしまいます。
ホームページがあればその法人のビジネスモデル、取引先等を把握し、実態を掴みやすいのですが、ホームページがない法人は「この法人は本当に実在するのか?」という疑いの目から審査に入ってしまいます。
業歴の長さ
業歴の深浅よりは、どのようなビジネスをやってこられたかに注目しています。あまりにも業態が短期間で変わってしまうと、審査のしようがないのが本音です……。
また、社名が頻繁に変わっている会社は要注意です。商業登記を確認した際に、事業と関連性のない社名にコロコロ変わっている会社には不信感を抱きがちです。
審査で気にしていないこと
固定電話番号の有無
固定電話でなければ通らないカード会社もあるようですが、そうでない会社もあります。近頃は固定電話を持たない法人が増えているため、携帯電話しかない法人を一律不承認とするのは時代にそぐわないのです。
カード会社によって方針が異なるので、一度審査に落ちてしまった方も他のカード会社で再度、申込みされる価値はあるかと思います。
不承認のお客様からの問い合わせ
言葉を選ばずに言うと、お客様からの「なんで不承認なんだ!」というお問い合わせは一切気にしていません。(笑)
理由を答えることもできないため、「総合的な判断です」としか回答できません。何時間もお電話を頂くこともありますが、この電話によって不承認が承認に覆ることもなく、むしろ審査部の心証を損なうのでなおさら承認できないという負のスパイラル。
上記のように、そのカード会社で通らずとも他のカード会社で承認されることもあるので、1回限定で他社に申し込んでみましょう!
まとめ
「審査部の仕事は、金払いのお客様を審査で落とすこと」と思われがちです。しかし実際は、いかに承認の範囲を広げて全体のカード利用金額を増やしながら、貸倒リスクを抑えるかということに努めている部署です。
お申し込み頂いた法人のお客様には、なるべくカードを持って頂きたいのが本音です。『業績赤字!業歴浅い!ハイ、不承認!』と切り捨てることはありません。
審査のルールは日々変わっていくものなので、数年前に不承認だった法人が今申し込むと承認されるケースもあります。グレーゾーンを小さくしつつ、的確な判断をするべく日々戦っている、そんな部署です。
- 三浦佑一郎
- シニアクレディッター(クレジット審査業務能力試験上級コース)
関西の国立大学を卒業後、メーカー系の金融機関で債権管理ととも与信審査を4年間担当。
某クレジットカード会社で法人カードの審査部門を経て、現在は法人営業をしています。経費精算に手間が掛かる法人こそ、キャッシュレスに取り組むメリットが大きいと思います。