今回は「クレジットカードはカードレスの時代に突入?」をご紹介します。
クレジットカードはカードレスの時代に突入?
最近では東京オリンピックに向けて“キャッシュレス(現金を持ち歩かない)”の到来が囁かれていますが、時代の最先端は“カードレス(カードを持ち歩かない)”です。
現金もカードも不要となれば、「居酒屋で財布をなくした!」「身に覚えのないカード明細が届いたぞ!」と大騒ぎすることもなくなるかもしれません。
スマホで決済が普通になってくると「キャッシュレス」を通り越して『カードレス」だよね。
— gao kak (@graiphus) November 29, 2019
https://twitter.com/sksk_Lynda/status/1201480673300582400
まだまだカードレスの事例は限られていますが、カード会社各社の取り組みやカード利用者のメリットなどをご紹介していきます。
【事例①】バーチャルカードでオンライン決済
バーチャルカードとは、ネットショッピングに特化したクレジットカードです。
クレジットカードと言っても現実にカードが発行されるのではなく、バーチャルカードを申込んで審査に通った方に16桁の会員番号が発行されます。カードの名前が付いているのにカードは発行されず、手元に届くのはカード番号という不思議な代物です。
国内や海外でのインターネット通信販売(ネットショッピング)やインターネットのプロバイダー使用料の支払いには使える一方で、一般の店舗(コンビニ、飲食店、物品の仕入れ)では使用できません。あくまでもネットショッピングに限定されるサービスですので、使い勝手の悪さは否めません。
それでも現実のカードを持ち歩く必要はありませんので、「ネットショッピングの時だけ使えれば良い」とお考えの方にはお勧めできます。
【バーチャルカード一覧】
カード名 | 年会費 | 発行手数料 | 国際ブランド |
---|---|---|---|
エポスバーチャルカード | 無料 | 無料 | VISA |
楽天バーチャルプリペイドカード | 無料 | 無料 | MasterCARD |
三井住友VISAバーチャルカード | 330円(税込) | 無料 | VISA |
Vプリカ | 無料 | 100~280円(税込) | VISA |
【事例②】手のひら静脈認証で本人確認
こちらは一般の店舗でもカードレスの実用化が進められている事例です。
2018年9月からイオンクレジットサービス株式会社が富士通株式会社の協力を得て、ミニストップの一部店舗にて「手のひら静脈認証」を活用したカード決済の実験を開始しているとのニュースが飛び込んで来ました。
同社が12日、発表した。実験は9月から来年3月までで、グループ傘下のコンビニエンスストア「ミニストップ」の首都圏の数店舗で、グループの従業員約1千人を対象に実施する。
イオンカードの情報と利用者の静脈の情報を登録すると、レジで誕生日の4桁を入力し、手のひらを端末にかざすだけで支払いができる。認証にかかる時間は1秒足らずという。
富士通の技術を使い、手のひらの静脈認証の誤認確率は1千万分の1ほど。手のひらの血管は、本数が多く複雑な配置になっているため、認証精度が高い。さらに誕生日と組み合わせることで、偽造などのリスクは、ほぼなくせるという。
19年度中の導入をめざし、財布を持ち歩きたくないスポーツジムや温泉施設、イベント会場などに提案していきたいという。他のカード会社との提携や、加盟店への拡大も視野に入れているという。
手のひらを機械にかざすだけで本人確認とカード決済ができるなんて、まるでSFの世界の出来事みたいですが、近い将来カードレスが実現する準備が着々と整いつつある様です。
【事例③】スマホ画面の顔認証で本人確認
大手クレジットカード会社のクレディセゾンもカードレス決済の動きを加速させています。
2018年10月からクレディセゾン株式会社が株式会社Liquidと提携して、スマホ画面の顔認証を利用した本人確認サービスを進めているとのニュースが飛び込んで来ました。
株式会社Liquid(東京都千代田区、代表取締役:久田康弘、以下「当社」)は、株式会社クレディセゾン(東京都豊島区、代表取締役社長:林野宏、以下「クレディセゾン」)との間で、オンラインで完結する新たな本人確認サービス、LIQUID eKYCの導入を検討する基本合意書を締結いたしましたので、お知らせいたします。
当社は、創業以来、生体情報にフォーカスした画像解析と機械学習を利用したビックデータ解析により高速処理を可能にした認証アルゴリズムを独自に開発し、次世代の社会インフラを支える技術を生み出し、クラウドサービスとしてFintechの領域で実績を積み上げてきました。また、犯罪収益移転防止法施行規則の改正案に準拠したオンラインで完結する本人確認サービスであるLIQUID eKYCの開発・導入を開始しております。
今般、クレディセゾンとの間で、顧客利便性を高めるためのソリューションとして当社のLIQUID eKYCの導入を目指した基本合意書を締結いたしました。今後、クレジットカードの申込みも含めた様々なサービスへの導入検討を開始します。
当社といたしましては、LIQUID eKYCをより即時性が求められる仮想通貨交換業・証券会社等の様々な事業者における本人確認手段としての導入を目指しており、今後行政手続や日常の本人認証まで様々な分野でLIQUID eKYCを用いた認証サービスを展開してまいります。
この仕組みが実現すれば、一般の店舗でカードレスが実現するのみならず、カード申込み時の本人確認にも応用されるかもしれません。
現在のカード申込みでは、本人確認書類として「運転免許証」「健康保険証」「マイナンバーカード」の提出が必須ですが、わざわざコピーを取って郵送が必要です。しかし、スマホ画面の顔認証で本人確認が完結すれば、コピーや郵送の手間やコストが不要になり、本人確認が即時完結するためにカード発行までの期間が劇的に短くなります。
顔認証の精度や取得したデータの管理など、今後も新たな課題が発生するでしょうが、カード業界の最先端を少しでもご紹介できれば幸いです。
カード会社のメリットは「発行手数料の削減」
カードレス化によるカード会社のメリットは何かと言えば、発行手数料の削減です。
皆さんが使っておられるカードを発行するにもコストが掛かっており、例えば一般カード(プラスチック製)は1枚あたり約3,000~4,000円程度、ゴールドカードやプラチナカード(チタン製)は1枚あたり約8,000~1万円程度掛かっています。
一般カード1,000枚では約300~400万円、ゴールドカード10,000枚では約8,000万円~1億円のコストです。カード会社にとって決してバカにならない程のコストが、カードレス化によって不要になります。人件費の削減に勤しむカード会社にとっては、まさに悲願とも言うべき課題です。
カード利用者のメリットは「不正利用の低減」
カードレス化がカード利用者にもたらすメリットとしては、「カードが入っている財布を紛失した」「スキミングやフィッシング詐欺などカードを不正に利用された」などのトラブルがなくなります。
うちの会長の法人カードを不正利用して176,520円iTunes課金した犯人へ。
176,520日間苦しみ続けろ。糞が。人の仕事増やしてんじゃねーよ— やこ a.k.a. VJ mini (@yaco1985) April 7, 2020
カードの不正利用は近年増加の一途をたどっており、平成29年のカード不正利用額は昨年度対比166%もアップしました。カード利用者にとっても、カード会社にとっても頭の痛い問題であることは間違いありません。
【クレジットカード不正利用被害の発生状況】
期間 | 不正利用被害額 | 偽造カード被害額 | 番号盗用被害額 | その他不正利用被害額 |
---|---|---|---|---|
平成26年 | 114.5億円 | 19.5億円 | 67.3億円 | 27.7億円 |
平成27年 | 120.9億円 | 23.1億円 | 72.2億円 | 25.6億円 |
平成28年 | 142.0億円 | 30.6億円 | 88.9億円 | 22.5億円 |
平成29年 | 236.4億円 | 31.7億円 | 176.7億円 | 28.0億円 |
特に急激に増加しているのが「番号盗用被害」であり、他人が不正に入手したクレジットカード情報(カード番号やパスワード)を使ってネットショッピングで悪用されています。
カード情報を他人に知られる要因としては、
- パソコンがウイルスに感染
- フィッシングサイト(偽のWEBサイト)にカード情報を入力
- 店舗での会計時にスキマー(読み取り機)にカード情報を不正に読み取られる
などが挙げられます。カードレス化が実現すれば、カードやカード情報が他人の手に渡る機会は確実に減りますので、カード利用者にとってのメリットも相当大きいのではないかと思います。
まとめ
- キャッシュレス時代の先にはカードレス時代が到来
- ネットショッピングでの決済手段はバーチャルカードに
- 一般店舗での決済手段は手のひら静脈認証で完結
- カード申込み時の本人確認手段はスマホの顔認証で完結
- カード会社にとってのメリットはカード発行手数料の削減
- カード利用者にとってのメリットはセキュリティの大幅な向上
【略歴】カード会社勤務5年目を迎える営業マン。趣味は転職(社会人10年目で転職6回)、特技は早期退職(最短記録は入社後3時間でクビ)。『転職の神様』なるハウツー本の出版を志すも、会社が副業禁止であえなく断念。昼間はクレジットカードの営業、夜間は法人カードの比較サイト運営に励む毎日。いずれは審査業務に携わるべく、クレディッター(クレジット審査業務能力検定一般コース)の資格取得に向けて勉強中。>> 運営者の詳細なご紹介はこちら