今回は「なぜ法人カードはニッチ産業なのか」をご紹介します。
《個人事業主やフリーランスにおすすめカード》 | |||
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カード名 | 年会費 | 審査の通りやすさ | |
1位 | NTTファイナンスBiz | 無料 | ★★★★★ |
2位 | 三井住友for Owners クラシック | 1,375円(税込) | ★★★★☆ |
3位 | セゾンプラチナ | 22,000円(税込) | ★★★★☆ |
4位 | アメックスビジネス | 13,200円(税込) | ★★★★☆ |
5位 | アメックスゴールド | 36,300円(税込) | ★★★★☆ |
【疑問】なぜ法人カードはニッチ産業なのか?
つい最近、柄にもなく経営者向けの名刺交換会に参加した時の話です。
そこでは様々な業種の経営者さんが集まっておられましたので、私もここぞとばかりに「法人カードの比較サイトを運営しておりまして・・」とサイトのアピールに走ったのですが、10人中9人の経営者さんが「なんですか、それは」と頭上にデカデカと「?」を浮かべておられました。
「まさか、経営者の方が法人カードを知らぬ筈はなかろう!」と高をくくっていた私は、慌てふためき冷や汗をかきながら法人カードの説明するハメに。。
最終的には「それは便利ですね」「憶えておきます」と笑顔で聞いて頂いたのですが、法人カードの認知度がそこまで高くないことを強烈に教えられた1日でした。灯台もと暗しとは、これいかに。
しかし、そんな私にも言い分はあります。
こんなこともあろうかと、事前にインターネットで調査したところ、2018年のデータでは法人カードの普及率は年々向上していたのです。(参照:『クレジットカード発行枚数調査結果一覧』)
発行年度 | 法人カード発行枚数(単位:万枚) | 前年比(単位:%) |
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平成26年3月末(2014年) | 639 | - |
平成27年3月末(2015年) | 874 | 36.8 |
平成28年3月末(2016年) | 888 | 1.6 |
平成29年3月末(2017年) | 923 | 3.9 |
平成30年3月末(2018年) | 1,002 | 8.6 |
クレジット協会が法人カードの発行枚数を調べ始めて5年ほどですが、毎年少しずつ上昇していることがわかります。これをもって、「世の中の経営者さんは法人カードを知っているに違いない!」と早とちりした私が諸悪の根源ではあるのですが。
では、なぜ法人カードがニッチ産業のポジションしか獲得できていないのか、徹底的に調べてみることにしました。
【回答】法人カードは大して儲からないから
あれこれ調べ回った揚句、「なぜ法人カードはニッチ産業なのか?」に対する答えは、法人カードは大して儲からないからが浮かんできました。
日本の法人カードは、カード会社が片手間でやってるビジネスに近い感じ。
決済額が多いから儲かるぞ…ってことで最近じゃ各社、発行に力を入れはじめてはいるものの、結局、そこの枠から出ることが出来ていない印象があります。
— クレジットカードの読みもの (@cardmics) May 31, 2019
ただ、これだけでは当たり前すぎて面白くもありません。なぜ法人カードが大して儲からないのか、大して儲からないのに発行する理由は何か、順を追って説明を進めていきます。
【理由①】個人向けカードの方が儲かるから
個人向けカードの方が儲かるから、この理由を深堀りするには、まずカード会社の収益構造を知っておくことが前提となります。
カード会社の収益構造については、【実は審査に通りやすい法人カードの選び方4選】意外と年会費が高いカードが狙い目?!でもご紹介しましたが、改めて記載しておきます。
【カード会社の収益構造】
- 加盟店からの手数料収入
- 分割払いやリボ払いよる金利・手数料収入
- キャッシングの利息
- 会員の入会金及び年会費収入
では、この4つがどれくらいの割合を占めているかをご紹介しましょう。2015年に経済産業省大臣官房調査統計グループが実施した調査に基づいています。(参照:『特定サービス産業実態調査報告書 クレジットカード業,割賦金融業編』)
【カード会社の収益割合】
- 加盟店からの手数料収入 42.7%
- 分割払いやリボ払いよる金利・手数料収入 25.1%
- キャッシングの利息 20.0%
- 会員の入会金及び年会費収入 12.2%
ここでも明らかなとおり、カード会社の主な商売はフィービジネス(手数料が儲け)です。フィービジネスの特徴とは、カードを使ってもらわないと利益にならないことです。
カード会社の収益の約90%がフィービジネスであり、しかも「分割払いやリボ払いよる金利・手数料収入」や「キャッシングの利息」は個人向けカードから獲得したものです。
基本的に支払いがマンスリークリア(翌月一括払い)の法人カードでは、分割払いやリボ払い、キャッシング機能が付属したものは極々少数に留まります。
カード会社としては、個人向けカードにポイントプログラムや提携サービスを充実させることで利用促進を促し、できれば分割払いやリボ払い、キャッシングの高い利息を払ってほしいというのが本音です。
さらに、これまでカード会社にとって1番の収益源であった「加盟店からの手数料収入」ですが、こちらも今後はどうなるか予断を許しません。
ひとつは世耕経済産業大臣が「カード会社は加盟店手数料を取り過ぎ。もっと下げなさい。」と公式にコメントを出したこと。(参照:【高すぎる加盟店手数料に政府のメスが?!】年会費が上がる前に法人カードを作りましょう!)
もうひとつは、近ごろ流行のコード決済の加盟店手数料が安すぎることが挙げられます。コード決済とは、PayPayやAmazonペイ、楽天ペイなど、スマートフォンのQRコードから決済ができるシステムです。
これらのコード決済では、決済手段としてクレジットカードを登録できるものもあり、「コード決済のポイント」と「クレジットカードのポイント」が二重取りできると話題をさらっています。
さて、一般的にクレジットカードの加盟店手数料は約3~5%ですが、コード決済にかかる加盟店手数料は約2.5~3%と安価です。
ですので、ユーザーとなるお客さん(ポイント二重取り)やお店(安い加盟店手数料)は、QRコードを歓迎すべきものですが、カード会社にとっては目の上のたんこぶとも言えます。実際、私の家の近所のスーパーではクレジットカードは使えませんが、レジ横にコード決済のシールがデカデカと貼っています。
いずれの理由にしても、法人カードよりも個人向けカードに注力した方が儲かることは間違いありません。
【理由②】法人カードは貸し倒れリスクが大きいから
貸し倒れリスクが大きいから、これは法人カードの利用限度額が大きいことが原因です。
個人向けカードの利用限度額がせいぜい100万円程度に対して、法人カードは数百万円~数千万円、果ては利用限度額なしのカードまで存在します。
これこそが法人カードの最大の特徴ですが、カード会社からすれば最大の脅威でもあります。薄利多売のカード会社にあって、数百万円~数千万円の貸し倒れが発生することは、何が何でも避けなければなりません。
そこで、個人向けカードと比べると、どうしても法人カードの審査は厳しくならざるを得ません。
申込み者個人の信用情報に問題がなければ、たいていの法人カードの審査には通るものですが、それでも個人向けカードの様に「ガンガン発行して、ガンガン使ってもらおう!」となるのは難しいのが実情です。
【展望】法人カードの将来像を占う
では、法人カードの将来像を私なりに占うと、おそらく現状維持が続くと思われます。
「現状維持」とは、テレビCMなどの宣言広告に力を入れるでもなく、専任の営業部隊を設けるでもなく、「申込みがあったら、その都度対応しておこう」というスタンスです。
その理由はこれまで述べてきたとおり、法人カードよりも個人向けカードの方が儲かるからです。
2019年6月のニュースでは、審査不要のプリペイド法人カード「Paild(ペイルド)」が登場してきましたが、そこまで爆発的に広がるとも思えません。理由はPaildの記事にも書きましたが、事前に口座へ入金した金額分しか利用できないため、自己資金に乏しいスタートアップには馴染みません。
これからも引き続き、法人カード比較サイトの戦国法人カードでは法人カードにまつわるニュースを取り上げて考察してまいります。
【略歴】カード会社勤務5年目を迎える営業マン。趣味は転職(社会人10年目で転職6回)、特技は早期退職(最短記録は入社後3時間でクビ)。『転職の神様』なるハウツー本の出版を志すも、会社が副業禁止であえなく断念。昼間はクレジットカードの営業、夜間は法人カードの比較サイト運営に励む毎日。いずれは審査業務に携わるべく、クレディッター(クレジット審査業務能力検定一般コース)の資格取得に向けて勉強中。>> 運営者の詳細なご紹介はこちら