法人カードのポイントで購入した商品は税務調査の対象?!【基本的に課税対象】

法人カードのポイントで購入した商品は税務調査の対象?!【基本的に課税対象】

今回は「法人カードのポイントで購入した商品は税務調査の対象?」をご紹介します。

 

法人カードのポイントで購入した商品は税務調査の対象?

中小企業の経営者や個人事業主の方にとって、各種経費の精算に欠かせないのが法人カードです。取引先との会食やETC利用を含めた各種交通費、宿泊費、税金の支払いなど、各種経費の精算に欠かせません。

メリットとしては、キャッシュレス決済で手持ちの現金を気にすることなく支払いが可能で、各種 経費の支払いを法人カードに一元化すれば、会計処理がとっても楽になります。利用額に応じてポイントも貯まるので、振込みや現金での支払いに比べてとってもお得です。

ただし、気になるのが「法人カードで貯まったポイントは税金の課税対象に含まれるのか?」「法人カードのポイントで購入した商品は税務調査の対象か?」という点です。

個人のカードであれば、気にする方はあまりいませんが、法人カードの場合はそれなりに高額なポイントが貯まるので、やはり気になるところです。

そこで、今回はこれらの疑問について要点をまとめて分かりやすく解説します。

 

法人カードポイントの税務上の解釈とは?

国税庁の見解は?

法人カードのポイント使用は、単に「値引き」であり課税対象にはあたらないという意見も実際に見受けられますが、国税庁のサイトには「企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について」で「ポイントは対価を支払うことなく給付を受けることができる個人と事業者の贈与契約である」と記載されています。

つまり、法人カードの利用で貯まったポイントは店舗などからポイント分の「贈与」を受けた、つまり税法上は「受贈益」の扱いになると理解できます。

結論を申し上げると、法人カードのポイントは厳密には税金の課税対象になるものと判断されます。

法人カードのポイントは値引きという意見もあるが?

先ほども申し上げましたが、法人カードのポイントは単に「値引き」であるとの意見も確かに見受けられます。

ポイントを使用すれば、そのポイントの使用分だけ価格が割引かれるだけという考え方ですが、この考え方に対して国税庁は資料を通して見解を示しています。

「ポイントプログラムにおいては、どれだけのポイントを使って売価をいくらとするかについて、販売者である事業者の意思の関与する余地がないため、課税されるべき所得を構成しない値引きには当たらず、全て課税される経済的 利益となると考えられる。」

つまり、店舗側がポイントを利用した商品の売価がいくらになるのか(いくら割引かれるのか)を決めることが出来ないため、法的性質上、法人カードのポイント利用は一般的な「値引き」には当たらず、課税されるべき経済的利益という扱いになると説明しています。

なお、国税庁は資料で、経済的実質では法人カードのポイント利用は「値引き」に相当すると説明していますが、こちらに関しては、「真実に存在する法律関係からはなれて、その経済的成果なり目的なりに即して法律要件の存否を判断することを許容するものではない」。

分かりやすくいうと「法的性質から離れて、経済的実質を判断するものではない」、法的性質の方が優先されるという見解を示しており、結論としては法人カードのポイント使用は「値引き」ではなく「贈与」、税法上「受贈益」の扱いになると解されます。

 

法人カードのポイントの税務処理とは?

貯まったポイントを使用した場合、所得の扱いになる

これまでの説明で、法人カードのポイント使用が課税対象になるということはお分かりいただけたと思いますが、それでは実際の税務処理はどうすれば良いのでしょうか?

最初に申し上げておきたい点は、ポイントは貯めておくだけなら特に税務処理の必要はないということです。貯まったポイントを使用する、具体的には貯まったポイントを使って商品・サービスの購入、あるいは一部の支払いに充てた場合に「事業所得の雑収入」や「雑所得」「一時所得」としての税務処理が必要となります。

分 類

内 容

利子所得

預貯金や公社債の利子

配当所得

株の配当や投資信託の分配

不動産所得

不動産や借地権、船舶、航空機の貸付

事業所得

農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業など事業から得る所得

給与所得

給料や賞与

退職所得

勤務先から受ける退職手当

山林所得

山林の伐採や立木の譲渡

譲渡所得

土地、建物、有価証券などの譲渡による所得

一時所得

営利を目的とする継続的なものではない、一時的な所得

雑所得    

上記に当てはまらない所得

上の表に記載の通り、「雑所得」と「一時所得」は所得分類の1つとなります。「事業所得の雑収入」とは「事業所得」の中にある「雑収入」という科目、雑収入とは営業外利益で発生した比較的少額な収入を表す科目のことを指します。

「事業所得の雑収入」として処理

法人カードのポイントは「雑収入」として税務処理するのが基本となります。

事業所得は、売上と雑収入を足した「収入」から「経費」を差し引いたものが所得金額となりますので、「事業所得の雑収入」として処理すると結果的に 法人カードのポイントにも課税されるということになります。

「雑所得」として処理することも可能

雑所得とは、サラリーマンなど本業を持っている方が副業で稼いだ所得がこれに該当します。

年間で20万円以上の雑所得があった場合に確定申告が必要となりますが、雑所得は「収入-経費=雑所得」となるため、20万円の収入があったからといって、必ずしも申告の義務があるとは限りません。

法人カードの利用で20万円分のポイントを貯めるためには、ポイントの還元率が0.5%であれば4,000万円の利用、還元率1%の法人カードの場合なら2,000万円の利用が必要です。

中小企業の経営者や個人事業主の方が、法人カードの利用で年間20万円分のポイントを貯める(年間2,000万円を超える高額な法人カードの利用する)ことは、一般的には考えづらいことから、結果的に「雑所得」として処理する場合には申告の必要がないケースが多くなると思われます。

「一時所得」として処理することも可能

一時所得とは、懸賞などの賞金や宝くじ、競馬などの払戻金、生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金がこれに該当します。法人カードのポイントは、「贈与」、税法上「受贈益」の扱いになることから、「一時所得」として処理するという考えも間違いではありません。

一時所得は、「収入-経費-特別控除額=一時所得」となりますが、一時所得の特別控除額は最高50万円まで 控除可能ですので、その他特別控除に含めるものがなければ、50万円相当を超えるポイントを使用しない限り一時所得の一部(課税対象額)として申告する必要はありません。

 

「ポイントがどのように使用されたか」問題

ここまでは、税法上のルール、厳密な考え方に沿って話しをしてきましたが、実際のところはどうなのでしょうか?

答えは、中小企業の多くが法人カードのポイントを単なる「値引き」として捉えて税務処理を全く行っていなかったり、社長が個人で商品・サービスの購入に自由に使っている場合が殆どのようです。

それでは、これらの行為は税法上等に照らして、本当に問題がないのでしょうか?

法人カードを利用し、その利用額に応じて貯まったポイントの所有権は、誰が考えても当たり前の話ではありますが、全て会社にあります。個人(役員や従業員)が勝手にポイントを使用したり、税務処理を行わないことは金額や悪質性にもよりますが、税務調査などで指摘を受ける可能性があります。

また、ポイントの使用を単なる「値引き」として扱って税務処理をしない方が、仕訳の手間が省けて税務処理が非常に楽で、課税対象として捉える必要もありませんが、「値引き」として扱ったポイントの金額がある程度高額(例えば10万円を超える金額)である場合には、税務調査の際に「値引き」では通用しない(「事業所得の雑収入」等での計上を求められる)可能性があるという点も踏まえておく必要があります。

 

透明性のある企業を目指しましょう!

法人カードの利用で貯まったポイントは、社長であっても個人的なものに使用することはいけないことです。また、ポイントを「値引き」として扱って税務処理をしないのも、税法上はグレーな行為です。

税務調査の際に、よからぬ指摘を受けないためにも、法人カードの利用で貯まったポイントは会社のために使うよう心掛けてください。

例えば、ある程度のポイントが貯まったら、それを会社の備品購入に使うことで経費削減にもつながります。その他にも、ポイントをギフトカード等の金券類と交換し、社員の福利厚生に充てるというのも良い方法だと思います。

ポイントは会社のために使って、「雑収入」としてしっかり税務処理されることをお勧めします。

 

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